レイ・チェスター教授
ピーボディ音楽院のギター科の主任を長年務めた教授です。
ギターを教えたらこの人の右に出るものはいないと、私は思っています。
演奏について、実践的な指導はバルエコ先生。
そして、その実践内容を言葉ですべて説明をしてしまうレイ。
ギター科の学部長のとき、一度だけ、私はレイに意見をしたことがありました。
バルエコのマスタークラスでの演奏者に選ばれて、マスタークラス当日の演奏直前、私はホールのすぐ外の廊下でウォームアップをして備えていました。
バルエコのマスタークラスは、ピーボディで年間4回行われます。各回では4名しか演奏することが出来ず、その演奏者は学部長のレイが選抜をしていきました。
当時、バルエコの生徒が7-8名。
レイ・チェスターとジュリアン・グレイの各教授のスタジオにも多数の学生が在籍して、マスタークラスにはほとんどの学生が卒業するまでに一度も演奏できません。
そのような場なので、非常に緊張します。
私は、年に2-3度はマスタークラスに出して貰えていたので、運が良かったのだと思います。
あるクラスの日、昼間には、レイの授業がある日でした。
ところが、私は豪快な寝坊。
授業をまるまる一コマサボってしまいました。
しかし、夜のマスタークラスには普通に準備していきました。
レイも当然のことながらマスタークラスに顔を出します。
私も分かっていながら、どう話して良いか分かりませんでした。
マスタークラスが始まると、学生とお客さんは皆ホールに入っています。
後続の演奏者だけが、廊下でポロポロとギターを弾いて自分の番に備えています。
あと、15分か20分程で自分の番という時に・・・
レイがエレベーターから降りてホールにやってきました。
当然、レイは、ホールの目の前にいる私を見つけました。
レイは、私を見つけるや否や・・・
「なんで授業をさぼった!!??」
と怒って私を追及してきました。
私は、注意はされるとは予想していましたが、まさかいきなりすごい剣幕で怒られるとは予測できませんでした。しかし、私は、ここでレイ・チェスター教授に口答えをしてしまいました。
「なんで・・・今、怒る必要がありますか!!」
「あなたは、教授なんだから、演奏者が直前にどのような緊張状態にあるか分かっているはずです。授業をさぼってしまったのは悪かったです。でも、私の演奏は次なんだから、終わってから怒っても遅くないはずです!!」
これは、私の演奏するものとしてのプライドだったのだと思います。
いや、ただ単に頑固だったのでしょう・・・。
時間がたてば経つほど、私は自責の念が強くなりました。
悪いのはさぼった自分です。
なんで、口答えしちゃったんだろう。自分は学生でレイは教授なのに・・・。
しかし・・・
2年、3年経っても・・・
レイは、そのマスタークラスでの私とのエピソードを授業の中で話すのです。
しかもその授業は「ギターペダゴジー」。これは、「ギター教授法」という授業です。
レイは、授業の中でそのエピソードを取り上げ、私を誉めるのです。
「演奏家は、演奏前に万全に準備しなければならない。それを私は教授であるのに学生にプレッシャーを与えてしまった。そうなると、その直後の演奏がどういうものになるか分かるだろう。keishiはそのことをその場で切り返して私に指摘してきた。教える人間はそういったことを認識しなければならない。」
とずっと言い続けていました。
逆に私は恥ずかしくなりましたが、レイのその教えにはとても敬服しています。
ピーボディに入学する前の年に、バルエコの夏季マスタークラスを受講しに行ったとき、英語が全く話すことが出来ない私に対して、筆談で会話を根気強くしてくれたレイ。バルエコに習いに来ないかと声を掛けてくれて、私を導いてくれたのもレイ・・・。
そのメモ帳は、今でも大事な宝物です。
苗字はチェスターですが、学生は皆、名前の方の「レイ」で呼んでいます。
性格は、アメリカ人らしい頑固おやじですが、授業中には、日本人の野球プレイヤーが来るから、今夜野球を見てくるように薦めてくれたり・・・
英語が完全に理解できないで考えていると、何度も・・・
「Keishi... Do you understand??」
と聞いていました。
私の名前を上手く発音できず、「Keishi」(ケイシ)を、「キーシー、キーシー」と呼んでいて、授業中なのに私の同級生からいつも訂正されていたり・・・。
この記事を書いている今は、午前2時半近くですが、寝ようとしていた午前1時過ぎに、上級生のPatrickからメールが来ました。
「レイが病気だからメッセージを送って欲しい」
と・・・。
もう6か月も病気と闘っているらしい。
全く知りませんでした。
早く元気になって欲しいです。
「また、ボルチモアを訪れるから、その時には、また私のギターを聞いてアドバイスをしてほしい」
とメッセージしました。
Best Wishes to Prof. Ray Chester...
ピーボディ音楽院のギター科の主任を長年務めた教授です。
ギターを教えたらこの人の右に出るものはいないと、私は思っています。
演奏について、実践的な指導はバルエコ先生。
そして、その実践内容を言葉ですべて説明をしてしまうレイ。
ギター科の学部長のとき、一度だけ、私はレイに意見をしたことがありました。
バルエコのマスタークラスでの演奏者に選ばれて、マスタークラス当日の演奏直前、私はホールのすぐ外の廊下でウォームアップをして備えていました。
バルエコのマスタークラスは、ピーボディで年間4回行われます。各回では4名しか演奏することが出来ず、その演奏者は学部長のレイが選抜をしていきました。
当時、バルエコの生徒が7-8名。
レイ・チェスターとジュリアン・グレイの各教授のスタジオにも多数の学生が在籍して、マスタークラスにはほとんどの学生が卒業するまでに一度も演奏できません。
そのような場なので、非常に緊張します。
私は、年に2-3度はマスタークラスに出して貰えていたので、運が良かったのだと思います。
あるクラスの日、昼間には、レイの授業がある日でした。
ところが、私は豪快な寝坊。
授業をまるまる一コマサボってしまいました。
しかし、夜のマスタークラスには普通に準備していきました。
レイも当然のことながらマスタークラスに顔を出します。
私も分かっていながら、どう話して良いか分かりませんでした。
マスタークラスが始まると、学生とお客さんは皆ホールに入っています。
後続の演奏者だけが、廊下でポロポロとギターを弾いて自分の番に備えています。
あと、15分か20分程で自分の番という時に・・・
レイがエレベーターから降りてホールにやってきました。
当然、レイは、ホールの目の前にいる私を見つけました。
レイは、私を見つけるや否や・・・
「なんで授業をさぼった!!??」
と怒って私を追及してきました。
私は、注意はされるとは予想していましたが、まさかいきなりすごい剣幕で怒られるとは予測できませんでした。しかし、私は、ここでレイ・チェスター教授に口答えをしてしまいました。
「なんで・・・今、怒る必要がありますか!!」
「あなたは、教授なんだから、演奏者が直前にどのような緊張状態にあるか分かっているはずです。授業をさぼってしまったのは悪かったです。でも、私の演奏は次なんだから、終わってから怒っても遅くないはずです!!」
これは、私の演奏するものとしてのプライドだったのだと思います。
いや、ただ単に頑固だったのでしょう・・・。
時間がたてば経つほど、私は自責の念が強くなりました。
悪いのはさぼった自分です。
なんで、口答えしちゃったんだろう。自分は学生でレイは教授なのに・・・。
しかし・・・
2年、3年経っても・・・
レイは、そのマスタークラスでの私とのエピソードを授業の中で話すのです。
しかもその授業は「ギターペダゴジー」。これは、「ギター教授法」という授業です。
レイは、授業の中でそのエピソードを取り上げ、私を誉めるのです。
「演奏家は、演奏前に万全に準備しなければならない。それを私は教授であるのに学生にプレッシャーを与えてしまった。そうなると、その直後の演奏がどういうものになるか分かるだろう。keishiはそのことをその場で切り返して私に指摘してきた。教える人間はそういったことを認識しなければならない。」
とずっと言い続けていました。
逆に私は恥ずかしくなりましたが、レイのその教えにはとても敬服しています。
ピーボディに入学する前の年に、バルエコの夏季マスタークラスを受講しに行ったとき、英語が全く話すことが出来ない私に対して、筆談で会話を根気強くしてくれたレイ。バルエコに習いに来ないかと声を掛けてくれて、私を導いてくれたのもレイ・・・。
そのメモ帳は、今でも大事な宝物です。
苗字はチェスターですが、学生は皆、名前の方の「レイ」で呼んでいます。
性格は、アメリカ人らしい頑固おやじですが、授業中には、日本人の野球プレイヤーが来るから、今夜野球を見てくるように薦めてくれたり・・・
英語が完全に理解できないで考えていると、何度も・・・
「Keishi... Do you understand??」
と聞いていました。
私の名前を上手く発音できず、「Keishi」(ケイシ)を、「キーシー、キーシー」と呼んでいて、授業中なのに私の同級生からいつも訂正されていたり・・・。
この記事を書いている今は、午前2時半近くですが、寝ようとしていた午前1時過ぎに、上級生のPatrickからメールが来ました。
「レイが病気だからメッセージを送って欲しい」
と・・・。
もう6か月も病気と闘っているらしい。
全く知りませんでした。
早く元気になって欲しいです。
「また、ボルチモアを訪れるから、その時には、また私のギターを聞いてアドバイスをしてほしい」
とメッセージしました。
Best Wishes to Prof. Ray Chester...