2006年11月

今日東京ギターカルテットの録音が終わりました。本当は今秋できてるはずだったのですが、、、。

トッパンホールでのリサイタルまでに間に合わなかったので、どうせだからもう少し曲を増やそうということになったのです。曲の構成はブラジル音楽で、ティコ・ティコ、ブラジルの水彩画、1×0、ブラジル風バッハ第4番など聞きやすいものから、本格的なクラシックものまで。

そんな曲を中心にして、2007年1月14日にはギター文化館でリサイタルを行います。そこではブラジルもののほかに、スラブ舞曲、版画なども演奏します。ぜひ、足を運んでください。

今日はバルエコのレッスンについて。

ギターの経験が増えてくると、バルエコという名を聞く方もいるかもしれません。それと同時に彼はどんなレッスンをするのかな、と思う方もいるかもしれないと思います。

バルエコは見た目が、結構強面なので、レッスンも恐いというイメージがあるようです。実際はとても温厚で、いい人です。しかし、世界で活躍しているだけあって、音楽に関しては、かなり細かいところまで要求してきます。あっという間にレッスン時間が終わってしまうのですが、1年に2-3度恐いレッスンがあります。それは、長期休み明け。

夏休みや冬休みは、学生は一時帰国したり、遊んだりで練習時間が減ったりします。ところが、バルエコは休みだったのだから、学期はじめはどんなに学生がうまくなってるか、期待してくるんです。そういえば、たしか在学1年目の冬休み明け、、、。

1年目は寮生活なので、冬は帰国してました。寮だと長期休みのときは寮から追い出されるのです。冬休みは日本で正月を満喫し、また渡米するわけです。

レッスン当日になり、部屋にいくと、前に受けているはずの学生がいません。と同時にバルエコの姿もありません。「あれ」と思いながら、部屋に入り準備していると、バルエコが戻ってきました。が、明らかに不機嫌そうな顔。

曲を一通り弾くと、しばらく楽譜を眺めながら動きません。そして、ようやく出てきた言葉。
「圭司はどうしたいの?」
一瞬で凍りつきました。これはどういう意味なのか。これからのことなのか、この曲についてか。そのくらい恐ろしかったです。「練習はしたか?」と聞かれたので、「ごめんなさい。あまりしてません」と答えました。「練習しました。」といったら、さらに悪い状況になるのが見えていたんです。

レッスンも半ばすぎると、ようやくまともなレッスンになり始めました。あとで聞いた話ですが、自分の前の人も同じ質問「君はどうしたいの?」と聞かれ、追い詰められたその人は、

「あなたのもとで勉強する自信はありません」

と、答えたそうです。それで、レッスンが60分のところが15分で終わってしまい、いなくなってたんです。道理で、機嫌が最悪だったんですね。

バルエコのレッスンは、ピーボディ音楽院でしか受けることが出来ません。(先月号の現代ギターでは、広告のページにピーボディ大学とありましたが、正しくはジョンズ・ホプキンス大学ピーボディ音楽院です)

バルエコの生徒は6-7人しかいなくてかなり狭き門です。そしてバルエコに師事すると、同時に補講レッスンとして、レイ・チェスターのレッスンも受けられます。演奏であちこちにいくので、そうやって、時間を補ってるんです。でまた、レイ・チェスターのレッスンがすごく良い。理論的で、技術的なことはレイのほうがうまく教えます。そして、バルエコは歌い方や、運指を教えるのが上手い。両方に師事することによって、より完璧に近いものを研究することが可能になります。総合的にはギターというより、音楽を教えてるといったほうが、正しいと思います。

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