長年、演奏をしていて、姿勢のことをもっと深く理解したいと思うようになり、それは姿勢の重要性と同時に音が出される際の力の使い方をもっと知りたいと思うようになったことに起因しています。

学生だった頃、わずか半年ですが中国武術の教室に通ったことがありました。基本的な8つの構え方(立ち方)があり、その練習が非常に過酷で帰りの地下鉄では階段で膝がいつも笑っていました。
このことはご紹介にあたっては大したことではないのですが、この頃に聞いた言葉で次のようなものがありました。簡単にいうと力の発動のさせ方といえば良いと思いますが「沈墜・十字・纏絲(てんし)」というものです。当然、半年しか続かなかったのでそれらを体得できるはずもありませんでしたが、それからというもの、イメージとしてどういうものなのかを意識するようになりました。

20代半ばからバルエコ先生の下で基礎からやり直したのですが、バルエコ先生は姿勢や動きを教えるときに「太極拳のように」と言うことがよくありました。

私が小さいころから懇意にしていただいた方で、太極拳の師範の方がありました。大会等で中国にもよく行かれる方だったのですが、私がアメリカから一時帰国するたびに私の演奏姿勢を見て「まだ軸が出来てないね」とコメントしてくれていました。そしてアメリカから引き揚げてきてから久しぶりにまた姿勢を見てもらった際にようやく「軸が身についてきたね」と言ってくれたのです。

「まだ軸が出来ていない」ということを、分かりやすく目安として、あることをして教えてくださいました。
それは、立っている私を正面から押すというもの。
軸が出来ていなかった頃は、押されるとあっという間に後方に数歩下がってしまっていました。

それが「軸が身についてきた」と言われたときに同様に試したところ、全く下がらず安定しているのです。

実は、これが音の出し方にも非常に影響してきます。

これは単なる姿勢、立ち方だけでの例ですが、音を出すとき、また表現で色々な音色を出すときに、どのようにして力を発出するかで雰囲気も変わるし、遠達性の大小も作ることが出来ます。
遠達性は楽器にも左右されますが、楽器の遠達性を最大限に活用するには姿勢と身体の使い方は必須です。

芯の強い音や、深みのある音を出したいときは重心をどうするか、どのタイミングで重心を移動させるかも関係します。重視するのは、そういった事のコントロールと同時に、重心移動によりその力をどう指先まで伝えるかということ。

そこに、「沈墜・十字・纏絲(てんし)」という事が共通しているなと気がついてきました。

細かくはここでは書きませんが、深い音を出すには沈墜、張った音を出すときには十字、押し出す強さのある音が欲しい時は纏絲(てんし)など、これだけではなく色々な表現の音色を作り出すときに自在に出来るように目指すのですが、姿勢、体幹など整っていないとなかなか出来ないという事も分かってきました。

音楽カイロの本は、健康に音楽をするための健康本として導入していますが、究極としては、演奏表現を追求するための入り口というものでもあります。


演奏ではよく脱力を心がけるように言います。

私も、もちろんある程度の学習が進んできた人には脱力をアドバイスします。
大分前に現代ギターの記事の中で、脱力は第1段階と書きました。

姿勢や動作のことにかなり注力するように心がけているのですが、厳密にいうと修練においては、この脱力というのは第2段階になります。

第1段階 しっかりと弾くための基礎的な力をつける
第2段階 余計な力を除去する(いわゆる脱力を意識)
第3段階 表現に必要な力を効率よく発出する「沈墜・十字・纏絲(てんし)」

第1段階は、ギターをはじめて間もない方、あるいは音の小さい方にして頂く課題。
演奏で使う基本的な筋肉をある程度強くして置かなければ、脱力に向かうときに絶対量としてのエネルギーが小さくなってしまいます。
V8エンジンをV10エンジンにしておこう、というと分かりやすいでしょうか。

第2段階は、余計な力を極力減らすということ。厳密に言うと、余分な力を取り除き、効率良い力の使い方を覚える下地作りといいましょうか。

第3段階は、表現に必要な力を適材適所で効率よく、最大限に活かしていくということ。


中国武術の用語を挙げていますが、武術を音楽に繋ごうとしている訳ではありません。
ただ、概念は武術、スポーツはじめ、どのジャンルでも身体を使うことならば同じことが言えると思っています。

たとえば、武術でいうと、宮本武蔵の「五輪書」水の巻には、手のグリップのことを書いています。それは刀だけでく、野球のバット、テニスのラケット、ギターのネック、どれでも効率の良い力の使い方は共通しています。

また同書では、かかとを地につけることの大切さも書いています。 
踏み出す時は、かかとを地につけた状態からが速く強くうてると書いています。


スポーツでも、たとえばイチロー選手は、盗塁が上手いというのも、ダッシュ時にかかとから蹴り出しているからスタートが早いというのがあります。
かかとを地につけた状態から動き出すのと、そうでないのを比べると明らかに差が生まれます。
レーザービームと言われたあの遠投球も投げる動作で力を出す瞬間、かかとから蹴り出しているのが分かります。更には纏絲(てんし)でエネルギーの発出をしているように見えます。

ギターの演奏も同様で、出したい表現によっては、かかとだけに視点を置いてみても、つけているかどうかで音の重さ・深さなど変わってきます。
演奏しているとどうしても腕と手指に意識が集中しますが、深い表現をするにはやっぱり全身で行っているという事です。


そのために、背骨と骨盤をあるべき状態に保ち、深層筋と表層筋を整える。
健康を謳うその向こうには、表現を追求したいという気持ちが常に働いています。

最近、音楽カイロ本「音楽演奏家のカイロプラクティック入門」について、ちらほら質問を受けましたので、その事について書いてみたいと思います。

受けた質問は大体この様な事です。

「演奏での腕や手の使い方をもっと沢山書かなかったのですか?」

という趣旨のもの。

演奏については、骨格や筋肉の面からの姿勢等に触れている部分もあるので、「ギターの弾き方」に視点を置けばそうご希望があるのもよく分かります。

しかし、この本は、ギター教本ではありません。
ギターをされている人は独学の方もいらっしゃるとは思いますが、プロの先生に指導を受けている方は多くいらっしゃるかと思います。

流派は色々とあっても、誰しも同じ骨格、筋肉を持っています。

そこのいかにして身体を整え、音楽生活を長く健康に行えるように目指すかという視点で書いているのが本著です。

身体に視点を置いたらメンテナンスをきちんと行い、生活習慣を改善することにより、健康に音楽を行うことが可能になります。
また、何かしらの症状の出現や悪化を遅らせる事が可能になります。

楽器を弾く人にとっての生活習慣「音楽生活習慣」は、栄養・運動・睡眠・演奏姿勢。

これらを改善していくのが予防・根本としてのケアです。

その中の一環として、最低限気をつけたい演奏上の姿勢について解説をしているということです。


ピッタリとはいかないですが、似たような例として、車にたとえてみましょう。

車のメーカーが違うと各操作ボタンなど、少しずつ違う場所に配置されていたりします。また、アクセルやブレーキなどの遊びの具合も少しずつ違ったり、内輪差などの違います。
トラック、ミニバン、セダンでも大分違うし、色々ありますよね。

各車種によって、運転が上手くなるようにするのは必要。
ここまでが、自己練習や教習でやること。
ギターでいうとご自身のギターにおける学習と思ってみてください。


では、それだけで長年快適な車の運転が可能でしょうか?

オイル交換
タイヤ空気圧
ワイパーの交換
その他様々なメンテナンス

これをきちんとしておかないと、次第に車は調子が悪くなっていってしまいます。

いくら運転技術に磨きをかけても、エンジンの調子が悪くなりミスファイヤが起きたら車は走りが悪くなり、そのうち走らなくなってしまいますね。
この部分が、今回の音楽カイロ本で言いたい事です。


つまり本著で示しているギターの姿勢は、基準とする空気圧やギヤレシオみたいなものなのです。
車そのものの状態を最善の状態に保つことにより、運転はより良い環境でする事が出来るようになります。

たとえがバッチリ出来てるか分かりませんが、お伝え出来ていたら嬉しいです。



本では、ページ数に限りがあるので、出来る限り分かりやすくという方向で書いています。

ギターをどう弾くかの教本ではなく、表紙にも記載しているように健康に音楽を続けていくための教本です。


ギターの一つ一つの技術と同じように、本で紹介している体操の一つ一つも実は深さがあります。

実際に、体操の動きなど、患者さんには定期的にして貰い、角度やポイントを修正していきます。

たとえば、あおたけを使用した、ひざパタパタ体操を例に挙げてみましょう。

膝を倒す角度は30度位が目安と紹介しています。

この角度は、標準的な数字です。
骨盤が歪んでいれば、左右差が出ます。
その場合どうするのか、とか。

それから、あおたけ枕のどの部分を骨盤のどこに当てるのか。
これを体得するかしないかで効果は全く違います。


このように、この本では、親しみやすいように分かりやすく書いていますが、理解を深めれば深めるほど音楽生活が楽になってきます。

皆様が健康に楽しい音楽生活が続くように。
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14日に茨城県は非常事態の対象から外れました。
これは素直に良いことだと感じます。
しかし、ウィルスが撲滅されたということではなく、ステージ4からステージ3に移行したという範囲で活動を再開していくことになります。
ステージ3は、4とほとんど変わらないので、同等に自粛ですね。

茨城県の場合は、この状況で進めば25日にステージ2への検討を行うと報道されています。

さて、このステージの内容、報道で出ていますのでご存知の方は多いかと思いますが、茨城県のHPを以下に貼り付けます。
https://www.pref.ibaraki.jp/1saigai/2019-ncov/stage3.html

こうしてみると、教室を再開するのはステージ1になってからが妥当と考え、順次ご連絡をさせて頂こうと思います。
ただし、当教室は5月末まで休講としていますので、6月からの再開についてのご連絡ということになります。

収入面や、気持ちとしてはもう再開したいと思うのですが、もし、生徒さんに感染が出てしまう事があれば大変なので、その点は自治体の方向性に出来るところまで沿っていきたいと思います。

オンラインレッスンは思っていた以上に良く、遠方からもご希望を受けていますので継続していきたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

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